2021.5月 11

提供価値を考え抜き、自治体・企業との連携でポケマルならではの体験を生む|新取締役 兼 事業開発部門 部門長 岡本敏男

2021年4月1日、ポケットマルシェ(ポケマル)の新取締役に岡本敏男が就任しました。岡本は、自治体様や企業様との連携を行う事業開発部門の部門長でもあります。事業開発部門では現在何に取り組んでいるのか、今後どのようなことに力を入れていくのか、また、新取締役としての想いや決意を語ってもらいました。

 

▼ PROFILE ▼

岡本 敏男(Toshio Okamoto)

大阪府出身。学生起業、人材紹介、組織開発等の経験を経て、NPO法人「東北開墾」にジョイン。事業譲受に伴い、2020年4月にポケットマルシェへ入社。日本食べる通信リーグ事務局長として、『食べる通信』事業を推進。2021年2月1日に事業開発部門 部門長に就任。

 

岡本の過去のインタビューはこちら


ポケマルを利用していただく入り口を広げる

── 事業開発部門では、現在どのようなことを推進しているのでしょうか?

 

大きくは、自治体様との取り組みと、企業様との取り組みに分けられます。まず、自治体様と一緒に何を進めているのかということからお話しします。

 

私たちは「ポケットマルシェ」という、インターネット上で生産者さんが直接消費者の方に農水産物を販売する場を提供しています。ですが、自分の生産物をインターネット上のプラットフォームを通じて自身で販売することについては、経験がない、よくわからないという生産者さんも多いです。そうした方がチャレンジできるような環境を、自治体様と一緒になって作っています。

 

佐賀県様、和歌山県様のように都道府県単位で連携することもあれば、最近ですと市区町村単位での連携も増えてきています。たとえば、昨年は大阪府柏原市様と連携協定を結びました。ぶどうが有名な地域で、生産者さんは観光農園などで収入を得ていたのですが、コロナ禍でお客さんに農園へ来てもらうことがなかなか難しくなってしまいました。「代わりにネットでぶどうをお届けしたいので、ノウハウを持っているポケットマルシェと一緒にやれないか」とのお声を柏原市様よりいただき連携に至りました。柏原市の生産者さん向けにネット直販に関する説明会を開いたり、より多くのユーザーさんに柏原市のぶどうや生産者さんを知ってもらえるように、柏原市の特集ページを立ち上げたりしました。

 

── 私たちよりも物理的に生産者さんに近い存在である自治体様と一緒に取り組みを行うことで、生産者さんがネット直販をはじめるハードルを下げているんですね。では、次に企業様との連携について教えてください。

 

企業様とは、お互いのやりたいこと・できることをうまく掛け合わせながら、農水産物をインターネットで買うこと、生産者さんから直接買うことをまだ体験したことがない消費者の方に対して、ポケマルを知って利用していただくための取り組みを行っています。昨年までは、ポケマルというオンラインのプラットフォームと、駅や商業施設といったオフラインの場所とを掛け合わせて、マルシェを開催していました。

 

たとえば、JR東日本様とともに、高輪ゲートウェイ駅で次世代マルシェを開催しました。一般的なマルシェ同様、数名の生産者さんに出店していただいたのに加え、新幹線による荷物輸送を取り入れました。ユーザーさんがポケットマルシェ上で事前に予約注文した食材が、当日の朝に産地から新幹線で運ばれ、高輪ゲートウェイ駅にて鮮度のよい状態で受け取れるという試みです。

 

他にも、マルイ様との連携では、マルイファミリー溝口店で「ポケマルみかん市」というイベントを開催しました。全国の生産者さんから12品種のみかんを仕入れて、溝口店を訪れたお客さんに品種ごとの酸味や甘味の違いを伝えて楽しんでもらいました。

 

── 私もスタッフとしてみかん市に参加しましたが、1個から購入できたので、食べ比べて気に入ったものを後日ポケマルで買えるのがとてもよかったです。オンラインを飛び出して企業様とリアルな場で連携することで、まだポケマルを知らない消費者の方との接点を増やしているんですね。

 

 


農水産物を売り買いしたその先の体験をより豊かなものに

── 事業開発部門では今後どのようなことに力を入れていくのでしょうか。

 

これまで、自治体様との連携においては、ネット直販に興味があるけれどなかなか踏み出せないといった生産者さんに、ポケマルを知って利用していただくことに重点を置いてきました。

 

今後もそうした取り組みは続けていきますが、さらに幅を広げたいと考えています。コロナ禍でネット直販をはじめる生産者さんが増加したこともあり、現在では5000名以上の生産者さんがポケマルに登録してくださっています。登録して出品はしたものの、今度はどうすれば売れるのかということに悩まれる生産者さんも多くいらっしゃいます。ユーザーさんのニーズをどう掴み、いかに楽しんでもらえる商品を出品するのか、どのようにユーザーさんとコミュニケーションをとるのかなど、今後は出品後の生産者さんへのサポートも自治体様と一緒に行っていきたいと考えています。

 

また、多くの自治体様が、農水産物の購入や生産者さんとのコミュニケーションをきっかけに地域にも興味を持ってもらいたい、遊びに来てもらいたいという思いを持っていらっしゃいます。ポケマルも、地方から人が離れ都市へ一極集中するという課題を、関係人口を生み出すことで解決しようという想いを強く持っています。だからこそ「個と個をつなぐ」ことを会社のミッションに掲げ、農水産物を通じて、生産者と消費者、都市と地方の関係性を育むことに取り組んでいます。

 

ですので今後は、オンライン上で地域のことをもっと知っていただけるような機会を作ったり、実際に地域を訪れていただくような企画を実施するなど、農水産物を通じて生産者さんを知り、生産者さんを通じて地域を知るという流れを形にしていきたいと考えています。

 

──自治体様とともに、出品後の生産者さんの販売支援や、その先にある関係人口創出に力を入れていくということですね。では、企業様との取り組みについてはどうでしょうか。

 

企業様との連携でも、これまではポケマルを知っていただく機会を増やすことに注力してきました。コロナ禍で生産者さんに対する応援消費が盛り上がり、インターネット上で生産者さんから直接農水産物を買うことを体験した方が増えてきた今は、その購買体験をよりよいものにしていきたいと考えています。

 

たとえば、どんな料理をしたらよいかという悩みに対してレシピの提案を行ったり、おいしいものをできるだけ簡単に食べたいというニーズに対して、調理器具・家電の提案をするようなことを考えています。まだまだ試行段階ではありますが、楽しみにお待ちいただけたらと思います。

 

 


「個と個をつなぐ」ことを大事にするポケマルならではの体験に

──事業開発部門 部門長かつ新取締役として、今後どんな役割を担っていきたいと考えていますか。

 

ポケットマルシェは創業から今年で7年目になりますが、当初はインターネット上で生産者と消費者が直接つながって農水産物を売買するということ自体が珍しく、産直ECと呼ばれる市場もありませんでした。そのため、会社としては、まずポケマルを知って利用していただくための投資を行ってきました。

 

ですが、コロナ禍で社会が大きく変化し、産直EC市場も、ポケマルというプラットフォームも拡大しました。より多くの人に知って使ってもらうための取り組みも継続していきますが、今後はポケマルという場を通しての体験をより豊かなものにし、「個と個をつなぐ」ことを大事にするポケマルならではの体験にしていきたいと考えています。

 

そのための新しい事業を作り、きちんと収益を上げるということが、私に求められている役割だと思っています。自治体様や企業様との新たな連携も含め、様々な事業にトライしていきます。

 

 


お客さんが求める価値を徹底的に考え抜く

──最後に、新取締役としての決意を聞かせてください。

代表の高橋は、何かを語る時の主語が常に「日本」「社会」「世の中」です。「自分が」「自分の会社が」という人が山ほどいる中で、本当に利己心のない人だなと尊敬しています。そして、高橋の掲げたミッション・ビジョンに共感して集まってきたスタッフもみな、社会に対して想いがある人ばかりです。一方でビジネスで社会に貢献する、社会を変えていくとなると、想いの強さだけでなく、会社として収益を上げ、確かな実績とマーケットにおける存在感を持つ必要があります。

 

ビジネスはよくお金儲けが目的と誤解されがちですが、お客さんに対して価値を提供した結果としてお金をいただくだけで、お金儲けは目的ではなく結果であると思っています。私は昔、自分で会社をやっていた経験もありますが、これまでのキャリアを通じて、お客さんにどんな価値を提供すると満足いただけるのか、そしてその対価としてお金をいただけるのかということをずっと考え続けてきました。高橋の社会への想いが強い分、私はバランスを取って、自社がステークホルダーに提供できる価値を考え抜き、社会を変えながら事業を成長させていくという動きに徹底的にこだわりたいと思っています。

 

生産者さん、ユーザーさん、自治体様、企業様、それぞれがどんな悩みを持っていて何を求めているのか、そしてそれがポケマルに既にあるものであれば提供し、なければ新たに作り出す。そうしてポケマル自体が社会に生み出す価値の総和を増やしていくことが、結果として社会を変えていくことにつながると思っています。

 

この会社への、そして社会への私自身の貢献として、誰に対してどんな価値を提供するのかということを徹底的に考え抜き、そして実行していきます。

 

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