2021.7月 05

会社の「位置情報」を把握して新たな価値を生み出すために、私はデータを活用する|生産者チーム 木学万里子

ポケットマルシェ(ポケマル)は、「こういう社会でありたい」という主観的な想いを大事にしていますが、そのためには客観的なデータから「実際の社会はどうであるか」を把握することが欠かせません。生産者チームでデータ活用を担う木学に、データをどのように捉え、活用しているのかについて語ってもらいました。

 

▼ PROFILE ▼

木学 万里子(Mariko Kigaku)

神奈川県出身。新卒でインテージに入社。コーチ・ジャパン、日本ロレアルを経て、2020年9月にポケットマルシェに入社。生産者チームでデータ分析と戦略を担当。


データは新しい価値を生み出すための「位置情報」

──ポケマルではどんな仕事をしているのでしょうか?

 

主には生産者チームで、データの活用を検討・推進する仕事をしています。ポケマルが保持するデータの中から必要なデータを取り出してきて、そのデータをもとにどのようなアクションを起こすかを考えています。

 

一例を挙げると、ポケマルには現在5,400名の生産者さんが登録してくださっていますが、ファンがたくさんいらっしゃる方から、プロフィールを記入しただけという方まで、様々な段階の方がいらっしゃいます。各段階にどのような生産者さんがいらっしゃって、どのような行動をされているのかを定点観測することで、どのようなサポートをすれば、生産者さんがポケマルをより活用していけるのか、ということを考えています。

 

生産者さんがポケマルを利用する目的は、売上を上げていきたい、ユーザーさんとのやりとりをしたいなど様々です。その目的に応じて、見るべき指標も異なってくると思います。売上、リピート率、ごちそうさま投稿数など、いずれも相互に関係する指標だとは思いますが、何をポケマルとしての目標とし、どのようなデータを見ていくのかということについては、これからさらに議論を重ねていきたいと思っています。

 

──ポケマルに入社する前にも調査やデータ活用のお仕事をされていたとのことですが、データやその活用には元々興味があったのでしょうか?

 

そうですね。一見平坦に見えるデータでも、違う角度から見たり、違う観点で整理すると、新しい発見があるのが面白いなと思っています。

 

ただ、私はデータがすべてだとは思っていません。データはあくまで知見を得るための箱であり、新しい何かを生み出すための「位置情報」だと思っています。データを見て「今どうであるか」を知るだけでなく、そこから新しいものを生み出すということを大事にしています。

 

 


生産者さんとポケマルで初めてつながった

──ポケマルで働こうと思ったきっかけはなんでしょうか?

 

価値観に共感できる会社で働きたいと改めて思ったんです。どのビジネスもそうだと思いますが、売上のために色々なことをやろうとすると、どうしても大事にしたいものが大事にできないような場面があります。そのような場面を見てきて、会社のミッションやビジョンはやはり大事だと感じて、そこに共感できる会社を探しました。ポケマルのことは転職先を探す中で初めて知ったのですが、ミッションやビジョンが自分の考えていることと同じだったんです。「そうそう、そうだよね!」と思いました。

 

また、生産者さんとつながれるというのが面白そうだなと感じました。子どもの頃に沖縄に住んでいたことがあり、自然の中で遊ぶのが好きでした。海と土に近い生産者さんに興味があったのですが、生産者さんと直接関わったことはなかったんです。

 

入社前に「まずは使ってみよう」と、ポケマルを利用してみました。生産者さんと直接つながれるということには半信半疑だったのですが、初めて生産者さんから届いたメッセージは「人」感のあるもので、「本当だったんだ!」と思いました(笑)

 

実は、私がポケマルを使いはじめてから、明日でちょうど1年になるんです。

 

初めて食材を購入した生産者さんとは今もメッセージでやりとりしたり、リピート購入させていただいています。「最初の生産者さん」ってずっと忘れないですよね。生産者さんにとっても、初めて買ってもらえたらうれしいだろうと思いますし、最初のユーザーさんのことは忘れないのではないかなと思います。

 

自分がユーザーとしてポケマルを使うときに、「初めてのユーザーになろうプロジェクト」と称して、ポケマルに登録してくださったばかりの生産者さんから購入したり、ごちそうさま投稿をしたりして楽しむことがあります。しばらく経ってその生産者さんの食材が売れていくのをみると、自分の「推し」が人気になっていくようで、なんだかうれしくなります(笑)

 

この1年間での購入回数を見てみたら80回ほどで、ユーザーとしてもポケマルにはまっています。私が「〇〇さんの食材だよ」と言いながら食卓に出すので、子どもたちも生産者さんのことについて話すようになりました。旅行先の地域で生産者さんのところに立ち寄ったりして、「つながること」をとても楽しんでいます。

 

 


関係性が生まれるプロセスを可視化する

──最近、ポケマルのユーザーさんに対してアンケート調査を行っていましたよね。背景などについて詳しく教えてください。

 

ポケマルでは、2020年の10月からSIIF(Social Innovation and Investment Foundation, 一般財団法人 社会変革推進財団)の助成を受けて、生産者さんとユーザーさんの関係性が生まれるプロセスを明らかにするプロジェクトを行っています。このプロジェクトの一環で調査を行いました。

 

ポケマルには、単に食べものを売買するだけではなく、メッセージでやりとりをしたり、実際に生産現場で会うなど、親戚のような仲になっている生産者さんとユーザーさんがいらっしゃいます。ポケマルは、生産者さんと消費者の方々が共に助け合うような関係性を育むということをビジョンに掲げていますが、そのプロセスを明らかにすることで、より意識的に関係性を生み出していきたいという思いがあります。

 

生産者さんやユーザーさんへの定性的なインタビューをもとに、「このように関係性が生まれていそうだ」という仮説を立てて、アンケート調査で定量的に検証しています。今回は関係性が生まれるプロセスに加え、ウェルビーイング(※身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること)についても調査しました。プロジェクトを進める中で、関係性を育むことがウェルビーイングを高めるのではないかという仮説が生まれたからです。

 

例えば、ある闘病中のユーザーさんは、ポケマルで生産者さんとやりとりをすることで、生きることにポジティブになったそうです。食べものというよりは、生産者さんとユーザーさん、さらには生産者さんを通して他のユーザーさんとの間に生まれた関係性が、ユーザーさんの毎日を変えました。

 

ただ、ウェルビーイングの計測はなかなか難しく、データでどこまで明らかにできるか、試行錯誤しています。2023年3月までのプロジェクトなのでまだまだ道半ばですが、今回の調査結果は夏頃に公表予定なのでぜひ楽しみにしていてください。

 

──プロジェクトにはどんな思いで関わっていますか?

 

どのようなアウトプットが出せるのかはまだはっきりわからないですが、関係性が生まれるプロセスが可視化されていくのは面白いなと感じています。

 

また、今までの仕事も普段の仕事も、データを見るときの視点はどうしても売上に偏りがちでしたが、このプロジェクトでは関係性という視点からデータを見ていくので、「大事なことは売上だけじゃないよね」と常に考えさせられます。売上と会社のビジョンとをうまくリンクさせて、いいスパイラルをつくっていきたいなと思っています。

 

 


データを活用し、ポケマルのビジネスを前進させる

──今後、ポケマルでどのようなことを実現していきたいですか?

 

ポケマルはとてもキラキラした存在だと思っています。一次産業は大変なことがたくさんあると思いますが、自分で育てたものが人々の生きる糧になるというのはとても素敵なことで、ポケマルはそれを伝えていけるからです。

 

そんなキラキラしたポケマルだからこそ、持っている世界観とビジネスをうまくリンクさせたい、ビジネスとして前に進めたいと思っています。ポケマルはまだまだ発展途上で、これから伸びていくところだと思うので、そこに自分が持っているデータに関するスキルを役立てたいです。

 

データからは何かしらを学びとることができますが、学びをどう活用するかという段階では、人々の考えや想いが大事になってきます。データをただ見るだけでなく活用し、新しい価値を生み出して、目指すところへしっかりと向かっていきたいです。

 

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