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【産直アプリを通じた関係人口創出に関する調査】5,600名への調査、生産者と仲の良いユーザの約7割が地域を訪れたいと回答 100名以上が生産現場を訪問、生産者と関係性が深いとウェルビーイングも高い傾向 〜関係人口考案者を中心に「関係人口研究室」発足、関係人口創出プロセスを解明し地域活性に寄与〜
2021.08.26
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生産者と消費者をつなぐ国内最大級の産直アプリ「ポケットマルシェ(ポケマル)」を運営する株式会社ポケットマルシェ(本社:岩手県花巻市、代表取締役:高橋 博之、以下「当社」)は、この度、代表高橋が考案した「関係人口」の創出プロセスを明らかにすることで、関係人口創出をより促進することを目的に、一般財団法人社会変革推進財団(理事長:大野 修一、以下「SIIF」)の支援のもと、研究組織「関係人口研究室」を発足しました。取り組みの第一弾として、休眠預金を活用し、ポケットマルシェ登録ユーザのうち5,600名を対象に、産直アプリを通じた関係人口創出に関する調査を実施しました。

 

【調査の背景】
当社は「個と個をつなぐ」をミッションに掲げ、生産者と消費者を直接つなぐ産直アプリ「ポケットマルシェ」を2016年9月より運営してきました。コロナ下で直販利用のニーズが高まり、現在約5,700名の生産者と35万名の消費者が登録しています。生産者と消費者が直接やり取りできる「コミュニティ」や「メッセンジャー」などのSNS機能を通じて、アプリ上で数々のつながりが生まれ、さらには地域に足を運ぶ消費者も現れるようになりました。

 

そこで、これらの実態を把握することで、関係人口が生まれるプロセスを可視化し、今後の地域活性に役立てることができると考え、「関係人口研究室」による取り組みの第一弾として、SIIFの支援のもと休眠預金を活用し、関係人口創出に関する実態調査を行いました。また、関係人口を創出する意義の一つに、つながりが作られることによる「ウェルビーイング(注)の向上」があると考え、生産者との関係性とウェルビーイングの関連性についても調査しました。

 

注:充実した状態、幸せな状態を指す。

 

【調査結果サマリ】
1)オンライン契機の関係人口について
生産者と仲の良いユーザの約7割(71.3%)が、生産者のいる地域を訪れたいと回答
産直アプリの利用を通じて、食材や生産者のみならず、その先にある地域にまで関心が広がり得ることがわかる。
実際に100名以上のユーザが生産現場を訪問
割合としては少ないものの、地域と関わる関係性が生まれ始めている点が特徴。
生産者と購入を超えた関係性にいたったきっかけは、「購入に関するやり取り」が最多
トップの「購入に関するやり取り」が22.2%、続いて「食材の美味しさ」が18.8%、「生産者の発信」が18.7%と、産直アプリを通じた購買体験が、関係性の構築に寄与し得ることが窺える。
2)ウェルビーイングについて
・「何回も購入している生産者」「周りの人や他のポケマルユーザーにお勧めしたくなる生産者」「その生産者のいる地域で災害などが起きたとき、気にかける生産者」がいると回答したグループは、そうではないグループより、ウェルビーイングが高い人が多い
上記グループは、そうではないグループよりウェルビーイングが高い人の多さが有意となった。

 

【総括】
産直アプリ「ポケットマルシェ」での購買体験を通じて生産者と関係性を深め、地域に関心を持ち、実際に生産現場を訪れるユーザが現れていることから、オンラインでのやり取りが関係人口に発展し得ることが示唆された。また、生産者との関係性が深いユーザは「ウェルビーイング」が高い傾向が見えてきた。今後も調査を継続し、関係人口の創出プロセスや、関係人口創出とウェルビーイング向上の相関性を明らかにしていく。

 

【調査結果詳細】
1)オンライン契機の関係人口について
■ 生産者と仲良くしているユーザの約7割が、生産者のいる地域を訪れたいと回答

 

 

「生産者と仲良くしている(販売・発送以外のやりとりをしている)」と回答したグループにおいて、ポケマルで出会った生産者さんがいる地域を訪れたいかを問う設問に対して、71.3%が「当てはまる」もしくは「やや当てはまる」と回答した。産直アプリの利用を通じて、食材や生産者のみならず、その先にある地域にまで関心が広がり得ることがわかる。

 

■ 100名以上のユーザが生産現場を訪問

 

 

商品を購入した生産者との関係性を問う設問では、103名が「生産現場へ訪問したことがある」、21名が「生産現場で宿泊をしたことがある」と回答した。割合としては少ないものの、「関係人口」とも言える地域と関わる関係性が生まれ始めていることがわかる。

 

■ 生産者と、産直アプリにおける「売り手と買い手」を超えた関係性にいたったきっかけは、「購入に関するやり取り」が最多で2割超

 

 

生産者と購入を超えた関係性にいたったきっかけとして最も多く回答(注)されたのは「購入に関するやりとり」の22.2%で、「食材の美味しさ」が18.8%、「生産者の発信」が18.7%と続く。「購入に関するやりとり」の具体例は「2人家族なので、好みのお野菜を少量で購入できたら嬉しいですとお話ししたのをきっかけに」「生産者さんとやりとりするうちに商品の受発注以外の話題で盛り上がり、色々なことをお話しするようになった」などがある。産直アプリを通じた購買体験が、関係性の構築に寄与し得ることが窺える。

 

注:「ポケマルで商品を購入する以外の関わりがある生産者さんが1人以上いるとお答えの方にお伺いします。そのような行動をとるようになったきっかけを教えてください」という設問に対する自由回答を当社で分類した。

 

2)ウェルビーイングについて
■ 「何回も購入している生産者」「周りの人や他のポケマルユーザーにお勧めしたくなる生産者」「その生産者のいる地域で災害などが起きたとき、気にかける生産者」がいると回答したグループは、そうではないグループより、ウェルビーイングが高い人が多い

 

 

「何回も購入している生産者がいる」「周りの人や他のポケマルユーザーにお勧めしたくなる生産者がいる」「その生産者のいる地域で災害などが起きたとき、気にかける生産者がいる」と回答したグループは、そうではないグループよりウェルビーイングが高い人の数の多さで、有意差が確認できた(有意水準5%)。生産者との関係性が深いユーザはウェルビーイングが高いと考えられることから、今後は因果関係の証明に向けて調査を進めていく。

 

■ ウェルビーイングを第一線で研究されている予防医学研究者 石川善樹氏からのコメント

 

 

満足度や幸福感に代表される主観的ウェルビーイングに大きな影響を与える要因の一つに、「つながり」があります。これはいうまでもなく、ウェルビーイングな人たちは豊かなつながりを築きやすくなり、逆につながりが豊かな人たちはウェルビーイングになりやすいというように、両者が相互に影響をしあっています。
つながりを考える上で重要になるのが、「意義深さ」です。たとえば天気のような軽い話題をするだけの間柄よりも、意義深いコミュニケーションをする方がウェルビーイングは高い傾向にあるという報告があります。
自分が生産したものに対する消費者の反応、あるいは自分たちが口に入れるものを苦労して生産している方々との対話は、きわめて意義深い話題であると考えられます。ゆえにポケットマルシェ上でつながった生産者と消費者は主観的ウェルビーイングが高い傾向にあるのではないかと考えられます。

 

【調査概要】
調査方法:インターネット調査
調査期間:2021年6月9日〜6月21日
調査対象:2020年3月1日〜2021年5月31日の期間中、1回以上購入経験のあるポケットマルシェ登録ユーザ
回答人数:5,687名

 

【「関係人口研究室」立ち上げの背景と今後の展望】
近年、地方における人口減少・高齢化による地域づくりの担い手不足という課題を受け、総務省が「関係人口創出・拡大事業」を実施するなど、地域や地域の人々と多様に関わる「関係人口」創出の機運が高まっています。特に、新型コロナウイルス感染拡大の影響で遠方を訪れることが困難になっている今、オンラインを入り口にした関係人口の創出が注目を集めています。「関係人口」は、代表高橋が2016年8月17日に著書「都市と地方をかきまぜる」内で、国内において初めて刊行物にて発表した概念であり、高橋が立ち上げた当社は、自治体向けに「食を通じた関係人口創出事業」を展開するなど、関係人口創出を意図した取り組みを強化してきました。

 

当社は、2020年11月にSIIFにより、休眠預金等活用法に基づく「地域活性化ソーシャルビジネス成長支援事業」の実行団体として採択されました。この度、SIIFによる支援のもと、産直アプリ運営で培ったノウハウ等を活用しつつ、一次産品のオンライン購買を契機とした関係人口の創出プロセスを明確化すべく「関係人口研究室」を立ち上げました。今後、創出プロセスを広く発信し、より多くのプレーヤーが関係人口創出を推進可能な社会の実現を目指しています。

 

また、当社は関係人口を創出する意義の一つに、つながりが作られることによる「ウェルビーイングの向上」があると考えています。関係人口創出とウェルビーイング向上の相関性についても、今後調査を進めていくことを予定しています。

 

【関係人口の考案者である当社代表 高橋博之のコメント】

 

 

都会から遠く離れた地域にも関わりを持ち続けようと主体的・能動的に動く都市住民たちは、常に自分にできる役割を探している。つまり、観客席からお節介にも“関わりしろ”のある地方のグラウンドに降りようとしているのだ。東日本大震災の被災地に駆けつけたボランティアがまさにそうだった。このような人たちを、私は「関係人口」と名付け、社会に提唱してきた。この「関係人口」を第二住民としていかに地方のまちづくりに参加させていくことができるか。たとえ人口が量的に減っても、各年代で地方の複数の現場に関わる人が増えていく人口の「質的変換」がなされれば、社会は今より活力を増すことだってあり得るはずだ。その突破口を切り拓く可能性が「食」にはあることを、この研究室で明らかにしていきたい。

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